田ケ谷左口神社

静岡市葵区北沼上字田ケ谷667

田ケ谷左口神社

概要

「一般社団法人田ケ谷左口神社親睦会」という法人登録をWeb上で見つけた。
地図上の法人所在地には「田ケ谷地蔵尊」とある。

「千代田誌」を確認すると、北沼上田ケ谷の氏神社は、
若宮神社(シャモジ社、天王社)となっている。
本社は若宮神社のようだが、「シャモジ社」が同地に法人登録されている左口神社の通称と思われた。

踏査結果・考察

現地を訪問してみると、「田ケ谷地蔵尊 老人集いの家」と掲げられた建物があった。
外に地蔵は見当たらないので、建物内に祀られているのだろう。

田ケ谷地蔵尊 老人集いの家

敷地内には質素ながら鳥居があり、小祠などが寄せられている。
扁額はないが、中心の社殿が若宮神社だろうか。
神社名鑑や江戸期の地誌などにも記載がなく詳細は不明である。
ただ、室町期には村が成立していたとされる田ケ谷において、心の拠り所となる存在だったに違いない。

若宮神社と思われる社殿
若宮神社か?

地区は異なるが、北沼上(本村)には、八柱神社に祀られていたもう一つの左口神社がある。
戦後分祀され、現状は確認できていないが、今も村内のどこかで祀られているのではないかと思う。

寄せられた小祠や庚申塔

2022/8/28踏査

再踏査結果

前回の踏査で鳥居と祠の存在は確認できたが、社名の特定には至らなかった。
鳥居や祠に社名の記載はなく、
同住所地には田ケ谷左口神社が法人登録されているものの、
「千代田誌」によれば田ケ谷の氏神は若宮神社であり、「シャモジ社(左口神社)」はそこに合祀されているように読める。

はっきりしない踏査結果がその後も気になっていたところ、
田ケ谷近辺の住宅地図上、地蔵尊の更に奥の山中に、神社や祠の地図記号があることに気づいた。

他の地図等を見ても社名等の手掛かりはまったく見つからないが、現地確認すれば何かわかるかもしれない。
ということで、現地を再訪問してみた。

地図上に神社や祠にアクセスできそうな階段が記されていたので、まずは階段を登ってみる。

階段

しかし、民家の敷地に通じるだけで、それ以上登れそうな道が見当たらない。

若宮八幡地主権現

仕方なく階段を降りると、目の前の民家のすぐ脇に、地図にはなかった別の階段がある。

別の階段

その階段の入口に石碑があった。

地主権現之由来

「地主権現之由来」とある。
どうやら地図記号はこれを指していたようだ。

早速こちらの階段を登るが、階段の先は藪が密生してしまっており、鉈でもなければ進めそうにない。
ここからの地主権現へのアクセスは諦め、改めて石碑を読んでみる。

「若宮八幡地主権現二神を当地に遷座し奉り」とある。
鳥居と祠のマークは、この二神を指しているのかもしれない。

そしてここで注目すべきは「若宮八幡」である。
千代田誌の「若宮神社」がこの「若宮八幡」を指しているならば、地蔵尊の小祠は若宮神社ではないということになる。

更に別の神社が現れる

他にアクセスできるルートがないか、諦めきれずに更に奥まで進むと、

鳥居につながる階段
階段の先に赤鳥居が見える

山上の鳥居につながる階段があった。
しかし、どうも地図上の神社の位置とは少しずれているような気がする。

近くで作業をされている方がいたので尋ねてみると、こちらの神社は伏見稲荷だそうだ。
明治期に当地から転出した家で祀っていた伏見稲荷が放置されてしまい、
その後不幸が続いたため、近隣の数軒で祀るようにしたとのことである。

伏見稲荷

田ケ谷左口神社の現存を確認

更にお二方からお話を聞くことができたので、地蔵尊の小祠についても尋ねてみたところ・・・

地蔵尊にある小祠が「田ケ谷左口神社」であることがあっさりと確認できた。

田ケ谷左口神社
田ケ谷左口神社

かつては山の上で祀っていたが、社地が崩れたため現在地に遷したとのことである。
他にも数軒単位で祀っている神様がいくつかあるようだが、田ケ谷全体の氏神は左口神社ということのようだ。

再踏査により思いのほか大きな収穫を得ることができた。
次は八柱神社から分祀されたという、もう一つの左口神社の行方をなんとか確認したいところである。

2023/9/17再踏査

静岡のシャグジ一覧

三峯神社の祠
こちらは三峯神社の祠のようだ。

コメント