概要
小島のおしゃもじさんは、小島藩の香華所として知られる龍津寺近くにある小祠である。
龍津寺背後の山の南東麓に祀られている。
おしゃもじさんを拝むと子供の夜泣きがおさまるといわれ、地元の人々に親しまれている。
なお、祠の管理は龍津寺が行っている。
(静岡市「史跡小島陣屋跡整備基本計画(構想部門)」)
踏査結果・考察
静岡市の「史跡小島陣屋跡整備計画」に記されていなければ知るべくもないシャグジだった。
また、現地にもシャグジであることを示すものはなく、予備知識なく訪問していれば気づくこともできない。
さらに、小島のおしゃもじさんは江戸期の地誌や大正期の小島村誌にも一切記録がない。
他の資料もなかなか見つからなかったが、
後日、昭和五十二年に小島青年団がまとめた「わが郷土」の中に、
「おしゃもじさん」に関する記事を見つけた。
これによれば、「おしゃもじさん」を拝めば子供の夜泣きがおさまり、
お果たしには新しいしゃもじの中心に黒く小さな印をつけて供えるとある。
信仰の由来に関する伝承は失われており、不明とのことだが、
その信仰形態に加え、当地の西側、山沿いに少し進んだ場所に諏訪祠があることからも、
おしゃもじさんがシャグジであることは間違いないだろう。
静岡市の資料によれば、この諏訪祠は小島陣屋が築かれた翌年の宝永二年(1705)、
小島藩家老矢島源五右衛門により再建されたとのことである。
元松平家臣奥平家にて武の神として祀られていたという。
なお、こちらも龍津寺が管理を担っているそうだ。
静岡県内に諏訪信仰との直接的な関係を示すシャグジは多くない。
しかし、小島のおしゃもじさんは諏訪祠に近いことや、
かつて「甲州往還」と呼ばれた国道52号沿いに立地することから、
諏訪信仰が盛んな甲斐国の影響を受けたシャグジと考えられる。
2022/6/4踏査
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