概要
三保佐久神社は、享保6年(1721)の「駿河國三穂社記」に「別宮摂社」として記される、
「左久神(サグジン)三保村森ノ中ニアリ」のこととされる。
また、雙栗(サクリ)神社とも称し、祭神は猿田彦大神
山城国久世郡鎮座の雙栗神社と同神であるという。
さらに、大正2年の三保村誌「迷信」の項に「杓文字神社」として記載がある。
検地の際に用いた竿を納めた「竿神社」が訛った社名という。
御利益は「硬虫、疣類ノ皮膚ニ霊験アリ」とされる。
治ると年齢の数だけ団子または飯杓子(しゃもじ)を奉納したという。
踏査結果・考察
社名、祭神、伝承ともに、典型的なシャグジの特徴を示している。
御穂神社の摂社という位置づけではあるが、佐久神社として独立を保ち、シャグジの名を今に伝える数少ない駿河シャグジの一つである。
ただ、疣はともかく“硬虫”がどのような疾患を指すのか今のところ不明である。
案内板にもあるように、三保佐久神社の近隣には源為朝の墓とされる祠がある。
また、神社境内には、為朝の妻で烈女として知られる、白縫姫の墓(祠)が近年移設されている。
その他にも、三保に限らず、清水には鎌倉期の史跡、伝承が多くあり、この神社も鎌倉期に創建されたのではないかという想像が働く。
ところで、三保佐久神社のようにシャグジを雙栗神社と書き表す例は、三保村の隣村である不二見村(現 清水区増)に鎮座する佐栗神社(現 増神明社)に通じる。
これらはシャグジの音韻からの転訛と思われる。
「駿河國三穂社記」にある、京都の雙栗神社との関連は後付けだろう。
なお、現在の社殿は近隣の小学校にあった奉安殿を戦後転用したもの。
偶々のことだと思うが、これについても隣村の佐栗神社と同様の特徴である。
社殿の扉の把手に結わえられた杓文字が親しみを感じさせる。
2022/10/22踏査
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